低いPERの株を買えば儲かるという考えは「落とし穴」があります。PERには2つの落とし穴が潜んでいます。その落とし穴をくぐり抜けることが、「投資勝率平均以上」への道となります。
PERの落とし穴1つ目は、PERが現在(あるいは来期予想)の利益を基準にしていることです。
企業というものは、ずっと将来にわたって事業を行なっていくものです。ですから、5年、10年後にその企業の利益がどのようになっているのかは、その会社の成長次第では、今の利回りであるPERの捉え方も変わってくるはずです。
では、具体例を見てみましょう。東武ストアと原信という食品スーパーを比較してみます。
06年の利益を基準にすると、PERは両者とも19倍程度ですが、07年の利益予想を基準にすると原信のPERは15倍まで下がり、東武ストアは22倍まで上がります。
現在のPERが一緒でも、将来の利益成長を考慮すると、原信のほうがずっと割安で良い投資対象となるわけです。つまり、私たちが株を買う時には、その企業の将来にわたる業績を予測できなければ本当の有望度はわからないのです。
ですから、まずPER10倍以下の会社を見つけても、喜んですぐに買ってしまうのではなく、将来を洞察することが買う前の大事な作業になります。
もし、その将来を洞察してみても大丈夫そうなら、落とし穴1つ目はクリアです。
PERのもう1つの問題は、「最終」利益を基準にしていることです。
PERのもととなる利益は、売上げから原材料費や人件費、借金の金利などもろもろの費用を引いた最終的な利益(純利益)です。
問題は、この最終利益がどのように作られているのかにあります。
1つめの落とし穴でお話したように、企業は将来にわたって事業を営んでいきます。ですから、私たちは企業の利益が恒常的なものか、それとも一過性の利益なのか、を判断する必要があります。
そのためには、「特別利益」や「特別損失」などの一時的なコストの影響を考慮しなければなりません。たとえば、たまたま遊休地(会社が所有しているが、使っていない土地)や有価証券(会社が所有している株や債券など)を売却したことによって特別利益が出た場合、一過性のものなので、この企業が来期、同じような利益を上げることは期待できません。
また、税金もポイントです。過去に赤字を計上し、欠損金がある会社は、今回利益が出たとしても税金を払う必要がないのです。したがって、今期の利益は、税金分だけ「底上げ」されている可能性があります。
このようなケースでは将来、欠損金がなくなれば、営業利益が変わらなくとも利益は大きく落ち込んでしまいます。
また、最近は、借金の大きな企業をPERで評価することは大変危険です。なぜなら、借金を多く抱えている企業であっても、今は借入金利が2%と低いため、利払いは少なく、企業の純利益は多くなっているからです。
ところが、今後金利が上がっていけば、事業の実態は変わらなくても、純利益は大幅に下がってしまう可能性があるわけです。
いくらPERが低いからといっても、営業利益を莫大な借金によって創出している企業に対しては、安心して投資はできません。
PERは、その本質(つまり利回りの逆数だということ)をしっかりと理解していれば、使いやすい指標です。しかし安易に使用すると痛い目を見ます。
企業を見る際には、利益の「継続性」や「成長性」や、それから利益の「質」についても気を配る必要があるのです。
投資の世界では、人よりも「半歩」だけ深く考えることが大切です。
何事もその本質を理解し、自分で使いこなせるようになるといいですよね。