株で、100万円儲かった人がいます。さて、この人は本当にもうかったのでしょうか?
実はこれだけではわかりません。
なぜなら、100万円儲けるのに1000万円使ったとしたら、利益率は10%ですが、100万儲けるのに1億円使ったのなら、利益率はわずかに1%、つまり定期預金に預けるのと同じだからです。
企業も、同じように投下資本(=企業が事業を行うために“投下”した資本(お金))に対して、どれだけの収益を生み出すことが出来たか?に着目する必要があります。
ところがこれだけでも不十分です。なぜ、不十分なのをご説明しましょう。
仮に1000万円で100万円儲けたとしても、その1000万円をどうやって工面したのか、が問題になるからです。
1000万円を、消費者金融で借りてきたら、金利は20%です。仮に10%のリターンを出しても、マイナス10%となってしまいます。
企業も同じです。
企業は資本を企業の外から「調達」してきて、事業運営を行います。その資本の「調達」先は、投資家、つまり銀行と株主です。銀行からの調達のことを、「借金」だとか「借入金」と表現し、株主からの調達は「株主資本」と呼びます。
皆さんもご存じの通り、借金には「利子」が付きます。その利子は、大まかに言って1〜3%程度が、今現在の目安です。もし利率が1%で100億円借りてくれば、1億円の利子と元本の一部を、ある一定の期間、返済し続けることになります。
しかし、一方の株主資本はどうでしょうか。バブル期に、株主から調達してきた資本には、返済義務がないため「無料」の“自己”資本とまで言われていましたが、それはウソです。
世の中に、タダより高いものはありません。
株主は出資先のオーナーになるためだけにお金を出すのではなく、きちんとリターンを貰いたいと思っています。
そのリターンの貰い方は配当金や、キャピタルゲインと言って、株を市場で売却した時に得ることが出来る利益があります。配当金もキャピタルゲインも、企業活動が上手く行き、その結果として株主が得られるものです。
最近のファンドによる買収の動きは、「俺たち株主なんだからちゃんとリターンをよこせ」と言ってきているのです。応えられなかったら株を売られてしまうので、経営者も必死です。
いままでの日本では、株主の“コスト”という認識があいまいだったために、今になって、あたふたしているという状況です。
ところで、この株主からの調達コストは、低くて4%程度から高くて30%以上の場合もあります。
いずれにせよ、銀行の利子とちがって、「成果報酬」ですから、求めるリターンは、利子よりも高くなります。こうなると企業は、単に収益性(ROIC)を高めるだけでなく、調達してきたコスト以上のリターンを出さなければならないということです。
この調達してきたコストのことを、WACC(ワック)といいます。企業は、通常、株主と銀行の二社からお金を調達してくるので、このワックは、両者の調達コストを平均したものになります。
たとえば、借入れで100億、株主から100億調達してきて、それぞれのコストが、借入れ金利1%、株主コスト6%とすると、両者を平均すると、ワックは3.5%となります(税金は無視しています)。
ワック3.5%=(100億円×1%)÷200億円 + (100億円×6%)÷200億円
この調達コストの計算法の事を、加重平均と言います。食塩水の濃度の計算と言えばよいでしょうか(笑)?
さて、復習です。
調達してきた資本を使って稼ぐ能力を表すのがROICです。そして、その調達のコストがWACCです。この2つは密接に関係しており、この2つを使って優良企業を表すことができます。
要するに稼ぐ能力の方が、調達コストより大きければ良いのです。
ROIC > WACC
の状態ですね。
最初に出てきた、10%のROICの企業はWACC=3.5%を超えているため優良企業と考えることが出来ます。一方、1%のROICの企業で同じ調達コストの企業は、・・・もうお分かりですよね。
企業はこのコスト返済のために業績を良くしなければなりません。「収益性が良いから」と言っても、その「収益性」を得るために、多くの犠牲(高い調達コスト)を支払っている企業への投資は要注意ですよ。